精神疾患の基礎知識(主な心の病気の症状)

症状から知る

あなた自身や、あなたの身近な人のことが心配なとき、こころの病気の症状を知っていることが役立ちます。

体の病気の場合は診察や採血などの検査をすれば診断がつくことがありますが、こころの病気の場合は本人の主観的経験も含めて、医師が症状と経過を総合的に判断して診断をすることになります。

こころの病気にはどういう症状があるかを知っておけば、自分や自分の身近な人の状態をより正確に評価して、適切な対策を講じることができます。医療機関を受診したときに、自分の状態をより正確に伝えることもできるでしょう。

身体面の症状

こころの病気のなかには、体の症状をともなうものが決して少なくはありません。
たとえば、疲れがとれない、動悸やめまいがする、頭痛がするといったことがこころの病気でも起ります。

しかし、体に症状が出ている場合は、まずその症状に関係する身体面についての検査や診察を受けることが大切です。

それでも異常がみられない場合は、こころの病気に関する医療機関に相談しましょう。
その背景にストレスやこころの病気がある可能性もあります。

疲労、全身倦怠感~体がだるい、重い、疲れがとれない~

身近な人が、「疲れた」という言葉をくりかえしていても、「疲れぐらい誰でもある」と思うかもしれません。いつも「疲れた」と言われ続けると、うんざりしてしまうことも考えられます。疲れを感じることを、怠けのように思う人もいるかもしれません。

しかし、単なる疲れだと思っていたら、その背景に身体疾患や精神疾患が隠れていることもあります。

あなたやあなたの身近な人が「疲れ」の症状を長く訴えている場合、まずは体に何か病気がないか検査したほうがいいでしょう。

本人も気のせいだ、休めば何とか回復すると言って、病院には行きたがらないことが多いかもしれません。

しかし、何らかの病気の可能性も否定できません。疲労の背景には様々な病気が考えられることを伝え、身体面での異常がみられない場合は、さらに精神科など、こころの病気に関する医療機関を受診するように勧めましょう。

そして、こころの面だけでなく、体の症状についてもその苦しさに共感しながら支えてあげてください。

こんな心の病かもしれません
うつ病
適応障害
統合失調症
パニック障害・不安障害

動悸・めまい~心臓がどきどきする、息苦しい、めまいがする~

動悸やめまいなどの場合、背景に重大な病気が隠れている場合があります。

まず最初に身体の病気について検査をしたほうがよいでしょう。

それでも異常が見つからないときは、こころの病気が隠れている可能性があります。

こころの病気も早めに治療をするほど早い回復につながります。

ストレスから疲れているだけだと思っているうちに、悪化していく可能性もあります。

休養しても症状が改善しない場合は、精神科への受診を勧めることが大切です。

パニック障害の場合、発作が激しいので自分から病院に行くことが多いのですが、体の病気だと思う人も多いでしょう。

場合によっては、本人はこころの病気だと認めたくないかもしれません。

発作が起こることを恐れて、電車に乗れない、繁華街にでかけられない、エレベーターに乗れないといったことも出てきます。

治療を受けることで、少しずつ外出できるようになりますので、家族など、周囲の人の理解やサポートがとても大切になってきます。

いきなり一人で外出するのが難しいことも多く、身近な人の付き添いが必要です。

そのようなときも、無理をさせず、つらい気持ちを受け止めながら、本人のペースで、気長に見守ることが大切です。

こんな心の病かもしれません
うつ病
適応障害
パニック障害・不安障害

頭痛~頭が痛い、ずっしり重く感じる、ズキズキ痛む~

慢性的に頭が痛いと訴えられても、まわりはそのつらさはピンとこないかもしれません。

神経質過ぎるのではないか、気のもちようだ、もっと気楽に考えたらよいなどと、思ってしまうかもしれません。

しかし、単なる頭痛だと思っていても、その背景に重大な身体疾患やこころの病気が隠れていることがあります。

頭痛くらい大したことないと受診をさけようと思っていても、医療機関を受診したほうがよいでしょう。

とくに身体疾患が見つからなかった場合、頭が痛いからといって精神科に行くことに抵抗を感じる人もいます。

しかし、こころの病気を治療をすることで、頭痛のつらさが軽くなることもあります。

また、こころの病気にかかって、頭痛をはじめ、様々な身体症状を訴える場合は、周囲の人は「またか」とうんざりしてしまうことがあるかもしれません。

そんなとき、こころの病が回復することで、体の調子もよくなっていくことがあります。

本人のつらさに共感し、理解してもらうことも大切です。

こんな心の病かもしれません
うつ病
統合失調症
パニック障害・不安障害

不眠~寝つけない、何度も目が覚める~

あなたや身近にいる人が不眠で悩んでいる場合には、眠れないことでどのような日中の問題が起こっているのか、よく話しましょう。

夜間の不眠があると、日中の疲労感、不調感、作業中の注意・集中力低下、気分変調など日中の生活の質的低下がみられるようになります。

さらに慢性的な不眠症になると、日中にこうした症状があるにもかかわらず、昼寝をとることが難しくなってきます。

夜も昼も眠りに入りにくい状態になるのです。こうした日中の生活の質的低下がある場合には、受診することをおすすめします。

眠れない背景にはっきりとした睡眠の病気が潜んでいることがあるので、注意してください。

レストレスレッグス(むずむず脚)症候群では、就床時に下肢の異常感覚が出現し、足を動かさずにいられなくなります。

このため著しい入眠困難となりますが、体験する人は眠れないせいで下肢の異常感覚が起こっていると勘違いしがちです。

これと関連し、周期性四肢運動障害という睡眠の病気があります。

眠っている時に繰り返し四肢のぴくつきが生じるために睡眠が浅くなったり、頻回に目が覚めてしまったりするのです。

この場合、夜中に目覚めることを自覚することはあっても、その原因となっている四肢のぴくつきには気づかないことがあります。

観察してもらえばすぐわかることなので、家族が睡眠中の様子を観察してあげることが重要となります。

睡眠時無呼吸症候群では、眠っている時にのどの奥が詰まって息が通らなくなり、睡眠が浅くなります。

この場合も、眠っているところを観察してあげれば、激しいいびきや呼吸停止が明らかになるものです。

こうした睡眠の病気が疑われる場合には、睡眠障害専門医の診察が必要です。

さらに、不眠はうつ病の初期症状としても重要です。

うつ病にかかったせいで、睡眠の障害と日中の気分の障害が起こってくるのですが、これが自分に起こると、眠れないせいで憂うつになったと考えてしまうことが多くあるのです。

眠れないという訴えを聞いた場合には、自分自身で生活習慣のチェックをしてみるようすすめるのが第一です。

つらそうに見える時には、医療機関を受診するようにすすめてあげることが重要です。

こんな心の病かもしれません
うつ病
パニック障害・不安障害

食欲不振~おいしく食べられない、何も食べたくない~

あなたや身近にいる人が食事が進まない時、それが何日も続いている場合や、減らそうと思っているわけではないにもかかわらず体重が減ってきた場合には、まず原因を調べるために、医療機関を受診するのがよいでしょう。

原因によって、周りがどのように接すればいいか、食事についてどのような協力ができるかなどは違ってきます。

周囲が心配しているにもかかわらず、本人が「大丈夫」といって医療機関に受診したがらないこともあるかもしれません。

このような場合、「何か重大な病気が見つかるのでは」と不安で、医療機関を受診するのをためらってしまうこともあるかもしれません。

また摂食障害では、しばしば病識がない(自分が病気だとは思っていない、具合が悪いとは思っていない)ことが特徴として挙げられます。

こんな心の病かもしれません
うつ病
摂食障害

心理面の症状

物事が思ったように進まないときには、気持ちが落ち込んだり、腹が立ってイライラしたり、不安で眠れないことがあります。
こうした心理面での症状があるからといって、「こころの病気」とは限りません。

このような症状が長く続いたり、生活するうえで支障が大きい、つらくて苦しいといった場合は、早めに専門家に相談することが大切です。

憂鬱(ゆううつ)~気持ちがしずむ、楽しいことがない~

まず専門医にかかることをおすすめします。

専門医のアドバイスを受けるまでは、できるだけ患者さんの負担にならないような、あるいは気持ちが少しでも楽になるような接し方を工夫してください。

自宅の近くにどんな病院があるのか、精神科と心療内科、どちらがよいのかなど、わからないようであれば、かかりつけの内科医をまず受診して、その医師から専門医を紹介してもらうのもひとつの方法です。

どうしても病院に行きたがらない方もいます。その場合、食欲がない、だるいなどの体の症状について内科医受診をすすめ、そこから専門医につなげる方法があります。

「あなたは病院に行かなくても大丈夫というけれど、家族としては心配でしかたがない。家族の心配を減らすためでもいいから、医師の判断を聞いてほしい」のように、家族が本当に心配していることを率直に患者さんに伝えることが受診につながることもあります。

うつ病の方を支える家族や周囲の方の気遣いが大変なことは言うまでもありませんが、

とくに適切な治療が始まるまでの心労は非常に大きいものです。患者さんをとりまく人が頻繁に話し合い、力を合わせることもとても大切です。

こんな心の病かもしれません
うつ病
躁うつ病(双極性障害)
統合失調症
認知症
パニック障害・不安障害

不安緊張~気持ちが落ち着かない・どきどきして心細い~

「気持ちが落ち着かない」「どきどきして心細い」といった症状は、「不安」や「緊張」といわれるもので、誰でも感じる感情の一種です。

何か心配事や気がかりなことがあるとき、目上の人や初対面の人に会う時、試験の前などにこのような症状を感じることは正常な反応で、別に病気ではありません。原因となる心配事などがなくなれば、症状も自然に消えてしまいます。

問題は、そのような理由がないのに「落ち着かない」「どきどきして心細い」などの症状が起こる場合です。この場合は「病的な不安」である可能性が考えられます。

「病的な不安」は「正常な不安」と違って、理由がないのに生じる、あってもそれと不釣り合いに強い、原因がなくなってもいつまでも続く、などの特徴があります。

「正常な不安」が危険に備え、問題解決へ向かって行動を起こす原動力になるといった、人間にとって必要な側面をもっているのに対し、「病的な不安」は何らかの精神的・身体的な疾患の徴候である可能性があります。

上記のような症状を感じ、それが「病的な不安」ではないかと思ったら、精神科か心療内科で診断してもらいましょう。

その前に予備知識として、不安とはどういう症状か、どんな病気の場合にみられるかについて、ひと通り知っておくのはよいことです。

不安は、精神医学的には「対象のない恐れの感情」と定義されています。

似たような言葉に「恐怖」がありますが、こちらは「対象がある場合」に用います(区別しない場合もあります)。

不安は身体症状を伴っていて、「どきどきする」(動悸)というのもそのひとつですが、ほかにも「胸がしめつけられる」「息が苦しい」「冷汗が出る」「体が震える」「ふらふらする(めまい感)」「手足のしびれ」「脱力感」「頻尿」「のどが渇く」「眠れない」「頭痛」など、様々な症状が現れます。これらは主として自律神経、とくに交感神経の働きによるものです。感情と、交感神経、副交感神経などの自律神経の働きは、脳の中で密接に関連しているからです。

こんな心の病かもしれません
うつ病 強迫性障害
パニック障害・不安障害
PTSD

怒り~イライラする、怒りっぽくなる~

身近な人がイライラして怒りっぽいと、八つ当たりされたりして、周囲も大きな影響を受けます。中には、怒りっぽい人の顔色をうかがいながら日々暮らしているうちに、自分自身が不眠症やうつ状態に陥ってしまう人もいます。

身近な怒りっぽい人に何をしてあげられるかを考える前に、まずあなた自身の健康を振り返ってみてください。

自分が健康でなければ、人を助けることなどできません。

最近、睡眠不足や疲労感、食欲低下などの症状はありませんか。ひとつでもあるなら、身近な怒りっぽい人への過剰な配慮の結果、あなた自身が強いストレスをため込んでいるのかもしれません。まずは身近な信頼できる人に体調や生活状況について相談してみましょう。

話を聞いてもらうだけで楽になるかもしれません。それでも体調がよくならないなら、心療内科や精神科を受診することをお勧めします。

あなたが直接、身体あるいは言葉の暴力を受けている場合は、絶対に我慢してはいけません。

ただちに親族と保健所に相談し、安全なところへ避難してください。

相手がアルコールを飲むと怒りっぽさがひどくなる場合や、薬物乱用が疑われる場合も、まずは保健所に相談してください。

相手が凶器を振り回すなど、生命の危険を感じた時には躊躇せず警察を呼んでください。

暴力や自分の体調の問題がない場合は、身近な怒りっぽい人との距離の取り方が重要です。

たとえ相手が家族や恋人、親友であっても、力になろうとしてあなた自身の生活を過度に犠牲にすることだけは避けてください。

怒りっぽさが数カ月以上にわたって長い間、繰り返し続いている場合は、精神障害の可能性もあります。

まずは怒りっぽさの原因について、相手が比較的落ち着いている時に話を向けてみてください。

相手を「病人」であると決めつけず、「周囲から見ると、イライラが目立つので心配」、「何か原因として思い当たることがあるなら話を聞きたい」、「こころの病気だったらもっと心配だから、念のため一度だけでも心療内科か精神科を受診してほしい」

と静かに伝えてください。 すぐに受診に応じるようなら、むしろ精神障害の可能性は低く、たいていは拒否されるものです。

けっして落胆せず、まずはあなた自身だけでも保健所の相談窓口に通い、機会を見て、相手に繰り返し同じメッセージを送り続けてください。周囲の支援者が焦らず孤立せず、健康でい続けることが、問題解決への何よりの近道なのです。

こんな心の病かもしれません
アルコール依存症
躁うつ病(双極性障害)
統合失調症
認知症
薬物依存症

幻聴~誰もいないのに声が聞こえる~

まず、時間をかけて十分に話を聞いてあげてください。

自分の心配に耳を傾けてくれる人がいると感じるだけで、ご本人はずいぶん安心できるものです。

そのうえで、"「誰もいないのに声が聞こえる」というのはどんなことですか"を一緒に読んでみてください。

どれが当てはまり、どれが当てはまらないでしょうか。やはり幻聴の可能性があるようであれば、専門家への相談をすすめてください。

「周りに誰もいないのに人の声が聞こえてくる」という状況では、多くの場合に本人はとても混乱した気持ちでいます。

どうすればよいかの判断がつきにくかったり、専門家に相談に行くべきかどうか迷いが強かったりします。

とるべき行動の整理をつけたり、相談に行ったりすることの後押しをしてあげてください。

こんな心の病かもしれません
統合失調症
認知症
薬物依存症

Silver Ribbon シルバーリボンは、知的・精神障害者の差別と偏見をなくすために、全世界共通で使われているシンボルマークです。